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静岡メディカルフォーラム2007
おなかの中に脂肪がたまっている方、それだけだったら問題はない。ところが血圧が少し高くなってきている、空腹時の血糖値、前の日から12時間以上何も召し上がらないで、病院や診療所に行って採血をした朝食前の血糖値です。これが高かったら危険です。中性脂肪が増え、善玉のコレステロールが低くなり、これらの条件があると、メタボリックシンドロームと言ってます。
乱れが生ずると
食べたものは十二指腸でブドウ糖と果物の糖、果糖に変わってます。これらは肝臓に向かって流れ込みます。すると、膵臓からは食べたものをバラバラにする消化酵素インスリンという極めて重要なホルモンが、やはり同じように肝臓に流れ込みます。食べたものを見事に同化して、血糖値も脂もすべていい状態に保ってくれています。わずかでも乱れが生ずると「肥満になったり、糖尿病になったり、メタボリックシンドロームになっていきます。
せんべいを食べた。甘い果物のジュースをガブガプ飲んだ。そうすると体の中で肝臓に向かって非常にたくさんのブドウ糖が流れ込みます。膵臓からは懸命にインスリンが分泌されます。肝臓は、流れ込んできたブドウ糖を全部取り込みます。健康な方は、甘い甘いジュースをたくさん飲んでも、せんべいを10枚食べても、血糖値は100から110程度までしか上がりません。
そういう状態が続いていると、肝臓は取り込んだブドウ糖を脂肪に変えて蓄積します。脂肪肝になると、今度は間食をしたあとで血糖値が上がってしまいます。脂肪肝になると、肝臓はブドウ糖を取り込めなくなる。ブドウ糖が腸から肝臓に行って、肝臓をすっこ抜けて全身に回る。だから甘いものを食べたりご飯のあとだけ高血糖になる。それでも食べ続けます。インスリンがいっぱい出ます。そうすると余分なエネルギーは全部脂肪となって、おなかの中にたまってくる。
糖尿病のプロセス
内臓の脂肪はブドウ糖をため込んで、それを脂肪に変えて大きくなりますが、大きくなるとどんどん脂肪を分解、インスリンが食い止めることができなくなる。脂肪はどんどん出てくる。この脂肪も全部肝臓に流れ込みます。肝臓はすべてのものを取り込んで、みずからは脂肪肝になる。そして糖尿病になる。
2年前に世界で、日本でメタボリックシンドロームの診断基準が出ました。いまメタボリックシンドロームと大騒ぎされてますが、実は大昔から私ども医者は経験的に、小太りでこれらの異常がある方は心筋梗塞や脳卒中になりやすいということを知っていました。
食事と運動療法で
肝臓の脂肪は食事療法だけで20%、食事療法と運動療法で30%も減ります。すると、食後に肝臓がブドウ糖を取り込みますから、食後の高血糖が見られなくなる。
20キロやせようと思わないでください。挫折します。1カ月1キロでもいい、2カ月に2キロでもいい。ちょっとずつでも食事、運動を注意してやっていくと、肝臓や筋肉の脂肪はみるみる燃える。すると血糖値などもとてもよくなる。
脂肪肝や脂肪筋を改善するために、食事中の脂肪を積極的に減らす。脂肪筋を改善するために筋肉をよく使う。そして朝食前、昼食前、夕食前も血糖値をできるだけ下げることが重要です。そうすると肝臓はブドウ糖をたくさん取り込みますので、夕食後の高血糖も見られなくなります。間食はおやめください。間食はエネルギーを増やすだけではありません。夕食前に間食すると、夕食前の血糖値が高くなってしまう。大量のブドウ糖が一気に肝臓に流れ込むと、肝臓はブドウ糖を取り込むことができません。
糖尿病、高血圧、高脂血症は、やはり薬が必要になる場合がとても多い。だからメタボリックシンドロームで高血圧がある。血圧だけは絶対に下げておかないといけない。脳卒中、心筋梗塞のリスクは高まります。肥満が著しい。悪玉のコレステロールも高い。やはり悪玉のコレステロールは下げておくべきです。そうしないと心筋梗塞、脳卒中の危険性は高まります。
筋肉にも脂肪
主治医から的確な治療を受けていただくということがとても重要です。メタボリックシンドロームだ。まだ俺は糖尿病じゃないよ。そこで無視いたしますと、動脈硬化は進むだけではなくて、両親のいずれかが糖尿病だとわかってる方は、どんどんインスリンが低くなってしまって、朝から高血糖になってしまう。ここから治療開始しても、治療に難渋する例がとても多い。
両親のいずれかが糖尿病の方には、遺伝的な素因で、食後にゆっくりとしかインスリンが分泌されないという方が非常にたくさんおられます。今までの日本では何も起こりませんでした。ところが最近、過食、運動不足、若い方が動かない。肝臓や筋肉にいっぱい脂肪がたまる。すると食後軽い高血糖になる。高血糖に刺激されて膵臓はインスリンをたくさん出して、このために、肥満になる。
このままいけば糖尿病が増え続ける。糖尿病は心筋梗塞、脳梗塞をとても早く起こす。寝たきりになる期間が長くなる。医療費が莫大に増える。さらに放っておけば失明する、透析になる。その予備軍であるメタボリックシンドロームから早く脱出していただかないといけない。
夕食後、テレビのお笑い番組は立って見てください。プロ野球やサッカーは当然立って、一緒になって応援してください。これを国民運動にしたい。じっと座ってる。ゲラゲラ笑ってる。食べ続ける。飲み続ける。全部内臓脂肪細胞にたまっていきます。肝臓に脂となってたまります。筋肉に脂となってたまってます。
(平成19年10月13日 静岡新聞 掲載)
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講師:河盛 隆造 順天堂大学医学部内科学 教授 |
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| 大阪大学卒業、カナダ・トロント大学研究員、大阪大学講師を経て、1994年から現職。トロント大学医学部教授を兼任する。日本糖尿病学会会長などを歴任している。 |
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