- トップページ >
- コラム・広報誌 >
- エクスパートインタビュー >
- メタボリックシンドローム
メタボリックシンドローム
消化器内科教授:市田 隆文
【司会】
メタボリックシンドロームとは何をいうのですか?
【市田】
働き盛りの人々を血管疾患から予防するために生まれた概念です。飽食の時代に増加してきた脳卒中や心筋梗塞など心血管疾患を起こしやすい状態をいいます。
運動不足や食べ過ぎにより内臓脂肪が蓄積し、高血圧、蒿脂血症、高血糖を伴って動脈硬化にいたります。
【司会】
内臓脂肪が増加すると何故いけないのですか?
【市田】
内臓脂肪(脂肪細胞がたくさん存在します)の増加により、高中性脂肪血症、インスリン抵抗性、耐糖能異常、糖尿病、血圧上昇、動脈硬化、高尿酸血症などが連鎖反応のように引きおこされます。
【司会】
脂肪細胞の働きは?
【市田】
内臓脂肪が蓄積されるときに、ある種のアディポサイトカイン(脂質代謝や環境に影響を与える生理活性化物質の総称です)が異常に分泌されます。これがメタボリックシンドロームの基盤となっています。大きく分けると4つの作用を有します。
- アディポネクチンは内臓脂肪が蓄積するときにその血中濃度が減少します。もともと、このアディポネクチンは血管の壁に働いて、動脈硬化のほとんどすべてのステップを抑制するのです。そして、傷ついた血管壁に集まって動脈硬化の進展に防御的に働くのです。このアディポネクチンが少なくなると、結局、動脈硬化が進むことになります。
- 肥大化した脂肪細胞はTNFαという炎症サイトカインを分泌して、インスリン受容体の働きを阻害して、インスリン抵抗性になります。
- アンジオテオシノーゲンを産生して血管が収縮する物質を作り、血圧が高まります。
- プラスミノーゲン活性化酵素を抑制する物質が作られて、最終的には血栓が出来やすくなります。
【司会】
インスリン抵抗性の意味がよくわかりません。
【市田】
インスリンとは、すい臓で分泌されるホルモンの一種です。肥満になるとさまざまな要因により、インスリン本来の機能である脂肪細胞へのグルコースのとりこみが行えない状態をいいます。インスリン非依存型糖尿病(NIDDM・2型糖尿病)、高脂血症ならびに高血圧、ひいてはそれら症候の総称であるメタボリックシンドロームの発症あるいは悪化などを引きおこします。
【司会】
そんなに増えているのですか?
【市田】
米国では約4人に1人がこの疾患にあてはまると報告されており、今後の日本でも食生活や生活習慣の欧米化に伴い、メタボリックシンドロームへの羅患が増加するものと予想されています。
【司会】
直接的な原因はなんですか?
【市田】
メタボリックシンドロームを引き起こす原因、過栄養、運動不足、ストレス過剰、高脂肪食過剰摂取などの生活習慣病にもとづく肥満と考えられています。
【司会】
それではどんな病気を引き起こすのですか?
【市田】
肥満症、糖尿病、高血圧、高脂血症などの生活習慣病が重なった状態が続くと動脈硬化が進行しやすくなり、心筋梗塞や脳卒中を起こす危険性が増加します。具体的には糖尿病、高血圧にくわえて、(1)虚血性心疾患、(2)脳血管障害、(3)閉塞性動脈硬化症、(4)腎障害、(5)NASH(非アルコール性脂肪肝炎症)などです。
【司会】
どうやって診断するのですか?
【市田】
診断基準としては内臓脂肪と関連のある腹囲、そして血液検査値のなかで中性脂肪、HDLコレステロール値、血糖値と血圧を基準に診断をおこないます。
【司会】
内臓の脂肪は測定できますか?
【市田】
腹部の単純CTスキャンで簡単に測定できます。約5分間で測定可能です。当院でもFat Scanとしてオーダーし、内臓脂肪、皮下脂肪、BMIを画像と数値で示すことができます。内臓脂肪130cm2以上が危険領域です。
【司会】
運動療法は効果ありますか?
【市田】
食事摂取によるエネルギー摂取量が身体活動によるエネルギー消費量が多いと、余剰エネルギーは脂肪に合成され内臓脂肪に蓄積されます。逆に身体活動によるエネルギー消費が食事からの摂取エネルギーを上回ると内臓脂肪が分解されて、エネルギーの材料として使われます。したがって、運動をいかに生活習慣化するかが、最大のポイントです。運動種目別のエネルギー消費量の目安を示します。下の表が運動種目別エネルギー消費量です。思いのほか、エネルギー消費量が少ないことがお分かりいただけるでしょう。
| 項目 | 10分続けるときの 消費エネルギー(kcal) |
体重60kgの人が 10分続けると(kcal) |
| 歩行速度60m/分 | 0.534×体重 | 32.04 |
| ジョギング 軽い | 1.384×体重 | 83.04 |
| ジョギング 強い | 1.561×体重 | 93.66 |
| 自転車平地10km | 0.534×体重 | 32.04 |
| 階段(のぼる) | 1.349×体重 | 80.94 |
| 階段(おりる) | 0.658×体重 | 39.48 |
| 掃除(はく、ふく) | 0.676×体重 | 40.56 |
| 水泳 平泳ぎ | 1.614×体重 | 96.84 |
| テニス | 1.437×体重 | 86.22 |
| ゴルフ(平均) | 0.835×体重 | 50.10 |
【司会】
薬物療法はありますか?
【市田】
メタボリックシンドロームに対するお薬はありません。それぞれの合併症に対する薬物療法があるという具合に考えてください。
たとえば、インスリン抵抗性を改善する対症療法としては、現在ではチアゾリジン誘導体(アクトスR)、ビグアナイド剤(メルビンR)と呼ばれるインスリン抵抗性改善剤があります。しかし、血糖値のコントロールが不良でインスリン注射に頼らざるを得ない症例も数多く見受けられ、根治を目標とする治療法が望まれています。
降圧剤、蒿脂血症治療薬、抗血小板薬、抗凝固薬なども必要になることがあります。
【司会】
食事療法の主体はなんですか?
【市田】
コラム「栄養サプリメント-食事療法について」に栄養の専門家からしめしていただいています。
