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C型肝炎ウイルスを斬る!
消化器内科 教授 : 市田 隆文
薬害肝炎、フィブリノーゲン投与、輸血などの言葉が新聞、テレビなどで踊っていますが、この主役はまぎれもなくC型肝炎ウイルスです。このC型肝炎ウイルスは明治維新前後にわが国に入り込み、駆虫剤の注射針、ヒロポン中毒者の回し打ちの針などを介した汚染伝播の歴史を経て、今では200万人とも300万人ともその存在を指摘されています。
このC型肝炎ウイルスは輸血や刺青、一部に性交渉などで伝播し、感染するといつの間にか肝硬変や肝がんへ進行するから厄介なことに成るわけです。最近のC型肝炎ウイルスのトピックスと注意点をまとめ、さいごに歴史的事実をご披露します。
最近のトピックスと注意点
【Q】
HCV抗体とHCVRNAを測定する意味は?
【A】
HCV抗体のスクリーニングで、HCV抗体陽性と判明しても、必ずしもC型肝炎ウイルス感染持続とは限りません。HCVRNA測定が重要で、これでHCVRNA定性陰性(タックマンPCR)であれば、過去の感染を示すだけで、今、肝炎の感染はないと判断できます。
【Q】
肝機能正常と言われましたが?
【A】
「HCV持続感染でトランスアミナーゼ値正常者は放置しても構わない」は危うい考えです。肝生検で、ほとんどの症例が慢性肝炎であることが判明しています。近々、正常値の上限を下げるつもりです。
【Q】
食生活に何かヒントは?
【A】
HCV持続感染者に「しじみ」 「レバー」、さらに「うこん」を積極的に推奨するのは間違いです。鉄過剰は肝臓の線維化を進展させる要因でもあります。
【Q】
すべてインターフェロンで治りますか?
【A】
Genotype Ibかつ高ウイルス量の患者さんが「あなたのC型肝炎ウイルスはインターフェロンの効きにくいタイプであるから、無駄だと言われた」と相談されますが、このタイプでも一年間治療で、約60%の方々がウイルス除去に成功します。Genotype IIa、IIbや低ウイルス量の患者さんでは90%近くウイルスが除去できるのです。基本的には週1回、ペグインターフェロン皮下注射と1日に2回、リバビリンという飲む薬で治療いたします。
【Q】
副作用が怖いのですが?
【A】
インターフェロンは副作用が強く、危険な薬剤で毛が抜ける、うつ病になる、高熱が続くなどと言われていますが、 「まあ、一度皮下注射して、それで耐えられないのなら無理しなければよろしい」といった性格で、絶対一年間やらなければならないという厳格な縛りのある治療ではありません。
【Q】
治癒ということはあるのですか?
【A】
成人病、生活習慣病で完全に治癒する病気はHCV慢性肝炎であることをお忘れなく。
【Q】
費用助成はありますか?
【A】
2008年4月からインターフェロン治療のHBV、 HCV慢性肝炎への医療費負担が補助されますし、臨床試験も利用されると、財政的に助かるはずです。
これらを「肝(きも)に銘じて」、分からなければ専門医にお尋ね下さい。
ライシャワー事件
アメリカ大使のライシャワー氏が1964年3月に、大使館門前で統合失調症患者にナイフで刺され重傷を負いました。奥様が日本人であることより、輸血を受けたこの時、 「これで私の体の中に日本人の血が流れることになりました」と発言し多くの日本人から賞賛を浴びましたが、この輸血がもとで肝炎に罹りました。その後、この輸血後肝炎がきっかけになり売血問題がクローズアップされ、輸血用血液は献血により調達されることになりました。この事件は「ライシャワー事件」と呼ばれ、精神衛生法改正や輸血用血液の売血廃止など、日本の医療制度に大きな影響を与えたことで有名な事件でした。氏はその後、吐血などを繰り返し、79歳の1990年、肝硬変で逝去されました。この原因がC型肝炎ウイルスでした。
第五福竜丸事件
1954年3月、焼津から出港したマグロはえ縄漁船第五福竜丸がビキニ環礁沖でアメリカの水爆実験の被害を受け、乗組員23名全員が被ばくした事件です。全国的な核爆弾反対運動などその事件は大々的に取り上げられましたか、被爆者のその後のことは多くは知られておりません。被爆者の半数以上はその後20年、30年後に肝硬変や肝がんでお亡くなりになったことはあまり知られておりません。その原因が、被爆後、治療のために受けた輸血に起因するC型肝炎ウイルスなのです。
